TEAC Z−6000
SUPER ANALOG CASSETE MASTER ¥238,000
ティアックが1982年に突如発売した超弩級の高級カセットデッキです。C1,C2以来,しばらくの間,高級機を
発表していなかったティアックが,それまでの不満をぶちまけるかのように,すべてを詰め込んだかのようなもの
すごいカセットデッキでした。最大の特徴は,人々に「ガンダムデッキ」とも呼ばれた,まるで要塞のような亜鉛ダイカストボディーです。高精
度の加工と強度,振動の吸収をねらったもので,これにより,カセットデッキながら重量が何と16.4kgもありま
した。ちょっとしたプリメインアンプより重かったのですからすごいものです。回転系は,キャプスタン及びリールをすべてダイレクトドライブする3DD(ダイレクトドライブ)メカニズムで,ワウ・フ
ラッターは0.019%という高性能なものでした。駆動系はもちろんクローズドループデュアルキャプスタンで,左
右のピンチローラーの径を変えることにより,ワウフラッターの周期を分散させる周波数分散型になっていました。
テープガイドは導電性のあるセラミック製で,静電気を逃す構造になっており,ヘッドベースは頑丈なダイカスト製
にして高精度と強度を追求して,高い耐久性を持たせていました。右側の方に多く並ぶ穴に専用の調整用ドライバーを差し込んで録音バイアス,イコライザー,録音再生レベルをテ
ープポジションごとに左右独立でマニュアル調整することができました。完全調整することで,テープの特性を十
分に引きだそうとするものでした。機能的には,ノイズリダクションとして,ドルビーBタイプ,Cタイプに加え,dbxも搭載していました。カセットホルダ
ーは,パワーイジェクトを採用し,録音時のソースからテープへのモニター切替は,テープが定速走行になると,自
動的にテープモニターになり,それ以外の時はソースモニターになるシンクロモニター機構を採用していました。
CPSという19曲までの自動頭出し選曲機構や曲のイントロを10秒ずつ頭出し再生していく機構なども搭載され
ていました。全身スイッチの固まりのような,まるで要塞を思わせるこのZ−6000は,決して操作性が優れたデッキではあり
ませんでしたが,ティアックの技術と情熱が注ぎ込まれたようなものすごいモデルでした。そのがっしりした構造
体そのままのどっしり安定した音を聴かせてくれました。テープデッキに慣れたマニアには使いこなしがいのある
名機だったと思います。なお,このZ−6000は,ティアック渾身の作である「Zシリーズ」の3兄弟中の真ん中に当たる機種で,この「Zシ
リーズ」には,Z−7000,Z−6000,Z−5000があり,いずれも常識を破った高性能・重装備のカセットデッキ
でした。
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TEAC Z-7000
MASTER CASSETTE DECK ¥298,000
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TEAC Z-5000
MASTER CASSETTE DECK ¥158,000
最高級機Z−7000には,コンピュータをフルに使った多彩な機能がさらに加わりました。コンピュータによるオートキャリ
ブレーション機能が装備され,データを3種類までメモリーする機能も搭載されていました。また,MOLバランスセレクタ
ーにより,バイアス値をLOW,STD,HIGHの3段階に選ぶことができました。また,HIGH EXTENDスイッチを入れる
と録音イコライザーが変更されて,メタルテープ使用時のハイレベル録音が可能になる機能もありました。その他,便利
な機能としてSES(SPOT ERASE SYSTEM)という機能がありました。0.3秒以上の任意の区間を自動で消去で
きる便利な機能でした。2〜10秒まで可変のREC MUTE,オートフェーダーも装備されていました。弟機Z−5000では,モーターが2モーターとなり,レベルメーターの仕様が変わり,イントロチェック機構,オートテープ
セレクター,ピッチコントロールなど一部の機能が省略されていました。ボディも少し小型軽量になっていましたが,ダイ
カストボディは共通でした。その他の基本的な部分は「Zシリーズ」共通の仕様になっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
音に徹して得た結論=それは,Z。
カセットデッキの結論を
耳でお確かめください。
Zの10大特長
@高信頼性を実現したダイカストボディ
Aワウ・フラッター0.019%を実現した
3DD(ダイレクトドライブ)メカニズム
Bデジタル時代に対応した
3NR(dbx Dolby B,Dolby C)システム
Cテープの性能を極限まで引き出す
独立3キャリブレーション(BIAS・LEVEL・EQ)機構
D±2電源DC構成による
ダイレクトカップリングイコライザーアンプ
Eマイクロプロセッサーによる高精度リニアカウンター
F入念な金メッキ処理のライン入出力端子
G軽く触れるだけで開くパワーイジェクト
Hスムーズな録音レベルセットを可能にした
録音プリセットボリュームとマスターフェーダー
I業務用デッキで使われているSYNCモニター
●Z-6000の仕様●
トラック形式 | 4トラック・2チャンネル・ステレオ |
ヘッド構成 | 3:録再コンビネーション×1,消去×1 |
テープ駆動方式 | デュアルキャプスタン |
使用テープ | C−30〜C−90カセットテープ |
テープ速度 | 4.8センチ |
モーター構成 | キャプスタン:ブラシレスDD(ダイレクト・ドライブ)DCサーボ・モーター×1
リール :コアレスDD(ダイレクト・ドライブ)DCモーター×2 メカ・コントロール:DCモーター×1 |
ワウ・フラッター | 0.019%以下(WRMS) |
早巻時間 | 約80秒(C−60テープ) |
総合周波数特性 | 18Hz〜26kHz(20Hz〜22kHz ±2dB EIAJ)〔メタル・テープ〕
18Hz〜24kHz(20Hz〜21kHz ±2dB EIAJ)〔クローム/コバルト・テープ〕 18Hz〜22kHz(20Hz〜20kHz ±2dB EIAJ)〔ノーマル・テープ〕 |
総合SN比 | 60dB(NR OUT)〔3%THDレベル,WTD〕
72dB(ドルビーB-NR IN 5kHz) 82dB(ドルビーC-NR IN 5kHz) 92dB(dbx IN 1kHz) |
ダイナミックレンジ | 110dB(dbx IN 1kHz,ピークレベル) |
入力 | マイク:0.25mV/−72dB(適合インピーダンス200Ω以上)
ライン:60mV(入力インピーダンス50kΩ) |
出力 | ライン:0.3V(負荷インピーダンス50kΩ以上)
ヘッドホン:100mW最大(8Ω) |
電源 | 100V AC,50/60Hz,42W |
外形寸法 | 432(幅)×163(高さ)×437(奥行)mm |
重量 | 16.4kg |
※本ページに掲載したZ−6000の写真,仕様表等は1982年12月のTEACのカタ
ログより抜粋したもので,ティアック株式会社に著作権があります。したがって,これ
らの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意くだ
さい。
●Z-7000,Z-5000の仕様●
Z-7000 | Z-5000 | |
トラック型式 | 4トラック・2チャンネルステレオ | ← |
ヘッド構成 | 3:録再コンビネーション×1,消去×1 | ← |
テープ駆動方式 | クローズドループ・デュアルキャプスタン | ← |
テープ速度 | 4.8センチ | ← |
モーター構成 | キャプスタン:ブラシレスDD・DCサーボ・モーター×1
リール :コアレスDD・DCモーター×2 メカ・コントロール:DCモーター×1 |
キャプスタン:DD・DCサーボ・モーター×1
リール :DCモーター×1 メカ・コントロール:DCモーター×1 |
ワウ・フラッター | 0.019%(WRMS) | 0.025%(WRMS) |
早巻時間 | 約80秒(C−60テープ) | 約90秒(C−60テープ) |
総合周波数特性 | 20〜22,000Hz±2dB(EIAJ,メタルテープ) | 25〜21,000Hz±3dB(EIAJ,メタルテープ) |
総合SN比 | 60dB(NR OUT)〔3%THDレベル,WTD〕
72dB(ドルビーB-NR IN 5kHz) 82dB(ドルビーC-NR IN 5kHz) 92dB(dbx IN 1kHz) |
← |
ダイナミックレンジ | 110dB(dbx IN 1kHz,ピークレベル) | ← |
入力 | マイク:0.25mV/−72dB(適合インピーダンス200Ω以上)
ライン:60mV(入力インピーダンス50kΩ) |
← |
出力 | ライン:0.3V(負荷インピーダンス50kΩ以上)
ヘッドホン:100mW最大(8Ω) |
← |
電源 | 100V AC,50/60Hz,48W | 100V AC,50/60Hz,35W |
外形寸法 | 432(幅)×163(高さ)×432(奥行)mm | 432(幅)×137(高さ)×350(奥行)mm |
重量 | 17.9kg | 10kg |
※本ページに掲載したZ−7000,Z−5000の写真,仕様表等は1985年3月のTEACのカタ
ログより抜粋したもので,ティアック株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等
を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
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